吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

風邪の時の悪夢

体調悪いとなんでまあ、あんなにも昏々と眠れるものなのか。
体中が重くて、布団にめり込んでいくような気分になる。布団の裏にいるまぼろしの人間に脳味噌を捕まれているようなカンジなのですが。それで、意識と身体が引き離され、何度も金縛りになる。
つけっぱなしのTVから聞こえる言葉と夢がごちゃまぜになり、出てきた芸能人の体の一部が気になり出したり---峰竜太の前歯から三本目の歯の裏に虫歯があって、竜太はそこを気にして舌をあてて気にしている、とか思って気が滅入る。個々に数千回の夢の断片を見ていたが、今日の目覚めは最悪で自分史上もっとも気分の悪い夢に入るので書こう。
夢を意識しすぎると頭が狂うのでやめたほうが良いと言ったのは誰だっけ?安部公房?まあ、そんなの気にするものか。わけのわからないものが好きなんだ。

昔住んでいた古びたアパートに前に来たので、なんとなく自分の部屋をのぞいてみたくなった。部屋の鍵は開けっぱなしで、そこには持っていき忘れた大切なモノがたくさん置いてあった。もったいないと思っていると友達がわらわらやってきて、レンタカーを借りて今の部屋まで運んでくれると言い出した。それは願ったり叶ったりなので、お願いした。
レンタカーを借りに行ってくれるまで荷造りなどをしている。ほどなくレンタカーがやってきたので手分けして荷物を運び出す。私は先回りして新しい家へ行こうと思う。何故か、箒で空が飛べる魔女っ子の私は共同の廊下にあった箒にまたがり空を飛ぶ。カナリのスピードで地面スレスレを滑走する。あまり高いところから飛ぶと落ちるので危険なので。すぐ私のあとに友達が同じく、箒にまたがり飛んできた。いっしょに行こうということで。家の近くまで来るとすごい数の蠅が飛んでいる。空や道が真っ暗だ。一段と蠅がたかっている家を不意に見るとそこには家庭でつかうとは思えない、青い生ゴミ処理機。そこから何かをひきづりだす、全身防護服の警官。警官の足下には黒いビニール袋の固まりが何個かある。みな、それを見てうなだれている。外には野次馬らしい近所の人たち。生ゴミマシーンの隣の家の大きなゴールデンリトリバー3匹がしきりに「何かの肉」をとりあっていがみ合っている。そこにも無数の蠅。数秒で合点し、あの家で殺人が行われ、それを生ゴミ圧縮マシーンにかけてミンチにし、隣の犬に与えていたのだ。
その時、近所の人に目撃され警察にご用になったんだ。なんてこったい同じ町内にそんな異常殺人が起こるなんて。後ろから来る友達に「左を見ちゃダメ!気分が悪くなるから!」と叫ぶ私。それで、口や目に蠅が入らないように右手で目の前を払いながら自分の家へ到着。鍵を開ける。三階から道路を見ていると、遠くで私の荷物を運び出す途中のレンタカーが見える。なにやら立ち往生している。私が友達に「心配だから見てくる」と言うと、「え?じゃあ私も行くよ」と言うので「死体の前を通らなくちゃいけないよ」というと「いいよ」と言う。では高速で目をつむってしまえば大丈夫だろういうことになり、箒にまたがった。風がびゅんびゅん頬を突き抜け痛い。目を開けることもままならない。蠅が顔に当たる。息も出来ない。もう大丈夫だろうと目を開けると曲がらなきゃ行けない露地を少し離れてしまった。いそいでカーブしたらコントロールを失って、真上に飛んでさらにぐりんと曲がりすぎ、スピードが落ちないまま今の家よりずっと裏の方に飛ばされた。一気に飛んでしまい、川を越えた。友達もあとからついてきた。力を入れすぎた。けっきょく、レンタカーのところはおろか、今の自分の家よりもずっと遠くなってしまった。川を一気に越えられればいいが、落ちたときのことを考えると迂回して、道路ぞいを行った方が安全だと思う。友達は私より寸手のところでブレーキがきいたようで、川の向こうにいる。友達をまたせるのもいやだと思ったし、なによりもレンタカーがどうなったのか気になるので、川を飛び越えることにした。助走を付けてびゅんと行くと思ったよりもあっさり越えられた。思い切って上空から飛ぼうということになり、どんどん空へと飛ぶ。地上に近いとまた、あの殺人者の家の気味の悪い肉塊を意識しなくてはならないから。危険だけどそれでコントロールを失うよりはましだと思う。どんどん地上と離れていく。畑は小さい、何もかも小さい、今の自分の家は4階立てだがそれよりはるか上空だ。上空から見下ろすと前の家と今の家がものすごく近いことに気が付いた。気が付きながらどんどんどんどん上昇した。高いところは苦手なはずなのに妙な高揚感で怖くて不思議な気持になった。急降下して、また死体の家の前を通るとき私は友達に聞こえるようにと大声で叫んだ。右手でその忌まわしい家を刺しながら「右を見るな!哀れむな!同情するな!(霊にとりこまれるから?)」そう叫んだときにその家に接近しすぎて、飾り柵の先に右手首が少し触れ、血が吹き出た。ああ、これは呪いかな?と思った。