読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

眉切り剃刀で負傷した猫

手に眉切り剃刀を持っていたとき、ひらりと目の前を猫が飛び上がった。一瞬、ひるんだうちに、猫は積み上げられた洋服の山に消えた。
しばらくして、足元に猫が絡み付いてきたのだが、その様子がおかしい。右足から血が流れている。もしかするとさっきの接触によって怪我をさせたのだろうか?どうにもこうにもこのままではいけないのでひょいと猫を抱きかかえ、病院へ連れて行くことにした。
見知らぬ二人の女性が車の運転をかってくれた。
猫を入れるカゴがないため、トランクの中に猫を押し込めた。思えばそれがいけなかった。
動物病院の前に車を止めて、トランクを開けた時、そこにはただ黒々とした闇が広がるばかりであった。こんなところに猫を閉じ込めてはいけなかったといまさら気がついた。しかも、この車は見た目はふつうだったがトランクの仕様が変であった。奥に排気ガスのダクトがのぞき、そこから転がり落ちてしまうようになっていた。さらに残酷なことにそこからは200度近い温風がまきあがるという。そこかしこに猫のもだえた形跡、爪あとが残されており、せめてもの救いは逃げ出したことだと思う。このままほうっておけばトランクの中でそのまま火葬だ。お骨になった猫の遺骸を抱き上げたところでなすすべもないだろう。
二人組みの女の怪しさを見抜けなかった自分に自己嫌悪しつつ、逃げ出した猫を探すため、きた道をとぼとぼと歩く。