吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

11/30(mon.)

多分、5,6年前のものだろう。これ。

ここは水槽の中のみたいなドームの中のコロニー。蔦や草で絡まった住宅がひしめいている。人工的に植樹された樹が鬱蒼と茂っており、建物と建物の境界線の役割を果たしている。
 日の光に似せた照明によってぼんやり曇った空から均一に光が降り注いでいる。家はほとんどが一軒家でどこの家も立派な庭を所有している。
 家の敷地内の地面(僅か1mmほどの厚さ)がおぼろな蔦草の絡まりでできていた。地階が透けて見えるので興味が湧いてそこの階段を下りた。コンクリートの階段を下り、頭上を見上げると薄いグリーンのプレート(地面)の隙間から光が漏れている。不思議なことに地下室だと思ったそこは普通の庭と同じで、睡蓮の咲く池まである。苔蒸した地下庭園の湿った空気はひんやり咽に張り付く。
 グリーンに染まったその場所を引き立つような赤いドアの玄関。戸は少し開いていて自分をこちらへと招いているようだ。暗い家の中に吸い込まれるようにドアーを押し開き中に入ると螺旋の階段が中央にあった。家の中の壁はガラスで出来ていて外が見える。ただし、土の中なのでたいした景観が望めるわけでもなく、もぐらにでもなったような気分。
 階段を上がる。上は暗くて何も見えない。足下さえも薄暗くて不確か。それでも途中、目をこらしているとグリーンの色の線を見つけた。それがプレートとの境目があるとすぐ分かった。たった一段、階段を上がり境目を抜けるとそこはまばゆいばかりの光の部屋だ。
 そう−−地上に出たのだ。
 今まで上ってきた階段がプレートで覆われ、見えなくなっていた。プレートの下が暗闇の世界ならあながちここは光の世界といった感じ。天と地ほど違う。
 四方で囲ったマジックミラーの壁からは外の様子が伺い知れる。ほんの少し湿気で窓が曇っていたけど、間違いないそれは先刻見た外の風景だ。
 上を見ると嫌みじゃない洒落たシャンデリアが吊られていた。天井はステンドガラスでできている。なにを模していたのか一瞥しただけでは分からなかったが・・・。
 マジックミラーの扉を抜けてそのまま地上に戻った。人工芝の眩しい緑と、グレーの空がそこにあった。
 今度はこの家の裏の家へ行こう。
 歩いて30歩のその家は家よりもずっと大きな木に隣り合っている。壁には樹の幹やら根っこが張っていて家が樹に取り込まれ埋没していた。向かって右側の方に竹薮のような森のようなとにかく樹がたくさん生えていて暗い影がある。それが徐々に左の方に押し寄せ、このコロニー自体をも取り込もうとしているみたいだ。吸い寄せられるように樹の穴の中にある開かれたドアへ歩み寄りながら頭の奥でふと思った。どうしてここには私以外の人間がいないのだろう?と。まるで何十年も前に死滅してしまった街並みみたいだじゃないか。そして私はこの暗闇の中に入ったら二度と出られない・・・そう感じると目の前が真っ暗になり、目が覚めた。