読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

奇妙な葬式

これも10年近く前に見た夢お蔵出しシリーズ。文章が今読むと気に入らない部分があるがまあ、いいだろう。個人名が出てくる部分はばっさり割愛。

12/3(Thu)
(前略)
 
 さて、やっと会場が開かた。ぞろぞろと前に従い、階段を上った。会場はビルの10階で会議室のようになっていた。部屋をぐるっと机が囲み、席が用意されている。そこへは入り口の近くにある棺に手向けの花を入れ、線香を立てる儀式をひとりひとり済ませてからその席に着けるというわけだ。
 葬式のコンサルタントという髪の長い巫女の女性がその場を仕切る。ウェーブがかった髪で服装は普段着。そこらへんにいる女子大生を捕まえてきて矢継ぎ早に仕立てられた巫女という風で威厳が感じられない。手順も狂っておりなにかとへまをやらかしている。
 今まで葬式出たことのない私は先の人の手順に習ってその場をやり過ごすしかない。じっと、やりかたを見て自分の番を待った。どうやら、棺の前に花束と線香の束を山なりに積めばいいようだ。なんだ、簡単じゃないかと思うが、間違えがあってはいけないと思うと緊張してしまって、うっかり線香を置き忘れてしまった。一人だけ戻り、遅れて線香を置く羽目になり顔から火が出そうだ。自分のとろくささに嫌気が差したが仕方ない。席まで線香を持っていった方が罰当たりというものだ。
 急いでもとの順に戻ろうと手早く線香を置き小走りしたが既に遅く、私より後に並んだ人達の後を追うかたちとなった。そのせいで旧友らとは席が随分と遠ざかった。私の着いた席はちょうど棺と対象の場で、窓に面した席だ。
 全員が会場に入り、いよいよ儀式が行われる。
 手順の書いてある紙を見ながら七八苦する巫女。カンニングペーパーを用いているくせ、間違ってばかりだ。
 参列者たちは72歳の老人の死体をまだ拝んでいない。これから彼のお顔を拝見し別れの言葉をかけるのだろう。参列者たちは故人と個人的なつながりがあるものが少ないらしく、みなどこか余所余所しい。自分もその余所余所しい仲間であるのだが改めてはじまって見るとこうも空々しいのなら彼女も居れば良かったのにと思った。
 「この死体はまだ死んでいない。微かに震え、生きている。このまま生かすのもみな次第だが、半死人の状態が続けばそれだけ復活が遅れ、また、金もかかる。明日にすれば今居るみなから金貨を一枚ずつ、集める事になる。それはあまり賢い選択とは言えまい。さあ、どうする?」
 これは決まった言葉らしい。勿論、答えは「今、行う」だ。生者がそう答えてやっと死者を送り出せるという問答らしい。
 「では、はじめよう。真の死はみなの手により行わなくてはならない。」

 俄か仕込みの巫女が間違えながら経を唱え、白い粉を袋から出し、それを清めの塩のように山形にした。粉はきらきらしていてガラスの破片を細かく砕き、すり潰したもののようだ。でも本当はこれは骨の粉じゃないと意味がないんだよなーと思った。おかしなことに私は儀式の手順を知っているのだ。
 これは復活する為に必要な行い。昔は祖先の人骨をすり潰すのがベターだとされたが、そこまでするのは近年では希で、動物の骨などを代用としている。骨をすり潰すのは巫女の役目。細かければ細かいほど復活が速まると信じられていた。用意する粉の量は故人と同じ重さ。その粉を参列者が左手に握り、死人の顔にかけなくてはならない。無論、最後の方に粉を掛ける人は故人の顔など粉まみれで伺い知ることが出来ないのだ。
 けれどあの粉はおかしい。きらきらしすぎている。巫女が手順を誤ったとしか思えない。
 巫女がまず最初の「粉かけ」を行おうと山盛りの粉からひとつかみ。すると巫女は「ぎゃっ」と叫んで手を払ってしまった。粉が部屋を白く舞った。巫女の手から血が流れてる。ああ、やっぱりあれはガラスの粉だったんだ。このままでは参列者の咽や目を傷つける恐れがある。どうしよう?
 誰かが叫んだ。
 「窓を開けろ!」
 私はすぐ後ろの窓を開けた。その時、私はどさくさで指を少し切ってしまい、指先に血が滲んでいる。
 向いでも窓を開け、通気しようとの考えらしい。頬や体を細かなガラスの破片が撫でる。呼吸すれば咽や内蔵をやられると思い、息を止めていた。

 窓の外は何時の間にか夜が明けていた。
 ガラスの粉はあっという間に風に舞う。そしてきらきらとひとすじのガラスの粉が群のように町中へ飛ばされ、落ちてゆく。
 ああ、でもこれは解決にはなってない。葬式も無茶苦茶になってしまったし、この町ではガラスの破片と知らぬ人達がたくさん傷ついてしまうなあ。
 ぼんやり思った。