吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

ロシアの巨匠ソクーロフ監督作品、昭和天皇主人公の「太陽」にまつわるあれこれ

http://www.sankei.co.jp/news/060317/bun036.htm

ことあるごとにソクーロフが好きだと公言しておるわけです。昭和天皇主人公で話題になった「太陽」によって広く一般に認知されればいいのにと思っていたわけですが、よもや上映はなさそう…。こんなことなら2月にappelでの参考上映会に意地でも行っておけば良かったと果てしなく後悔中。
これね…。

タイトル ソクーロフ『太陽』を巡って
企画者 tattaka
開催日時 2006年02月17日(開演:20時(開場19:30))
開催場所 東京都 (世田谷区 経堂 appel)
関連コミュニティ appel
詳細※参考上映あり
トーク:毛利嘉孝カルチュラル・スタディーズ)×tattaka(appel)

町山さんのブログを読んでさらにその気持ちが拍車をかけるのでした。でも、DVDで観てもソクーロフはすごく変なことをしているに違いないので画面でわかんないだろうなあと思うと劇場で後悔して欲しい!せめて、でかいプロジェクターで観たい!じゃないとヤダ!!!
あんまりにも悔しいので参考リンク集などを作りました。興味のあるかたは是非、辿ってみてください。

【参考リンク】
佐野史郎公式サイト
橘井堂/アレクサンドル・ソクーロフ監督『太陽』

http://homepage2.nifty.com/deracine/russia/solntse.htm
 ソクーロフ氏の記者会見での発言では、「政治・歴史の問題を蒸し返すつもりはない。戦争の犠牲者をこれ以上増やさないため、人間宣言をするに至った昭和天皇の内面的葛藤を描いた」とあります。

http://home.att.ne.jp/apple/berlin/baustelle/BAUSTELLE/bau_diesonne.html
ベルリン映画祭でのレポート

ソクーロフが昭和天皇を描いた映画『太陽』をDVDで観る - 映画評論家町山智浩アメリカ日記
映画評論家・町山智浩さんの詳細なレポート

ベルリナーレ(ベルリン国際映画祭)2005 ソクーロフ 『太陽』

ZAKZAK

■太陽 Solnze(英題:The Sun) イッセイ尾形|ツボヤキ日記★TSUBOYAKI DIARY

ついでなので、ソクーロフと私の思い出話でもさせてください。

ソクーロフの映画を日本で「日々はしづかに発酵し…」*1を、私は1994年に銀座のテアトル西友で上映された時に観ました。これも不思議な縁で、その頃、働いていた職場のすぐ近くのめったに立ち寄ったことがない古本屋にポスターが貼ってあり、まったく予備知識もないままフラリと店に入り、ふらりと何故か、チケットを買ってしまったという妖怪にでも憑かれたかのような謎の行動を取ったのです。まったく理由はわかりませんでした。もらったチラシの裏には淀川長治のコメントがありました。そのコメントにはソクーロフのカメラの視線がなめかましいというような意が書いてあり(あとでパンフレットを参照します)いったい、この映画はどんな映画なんだろうと期待しました。でも、あまりにも予備知識がなかったのでもし、全然、気に入らなかったらすぐに映画館を出てしまおうとも思っていたのです。

しかし、その期待は裏切られることはありませんでした。
はじめの5分で私は魂を持っていかれました。上昇して突然、落下し、地面スレスレで地平の拡がりを知るのです。その後はフリークスの写真がイメージ的に使われました。あとは意味不明なイメージの断片を無理やりつなげたような映像が…。まるで夢の中の出来事のようでした。また、音が素晴らしく、現代音楽とも音響派ともエレクトロニカともフィールドレコーディングともその全部とも言えるようなSEが意味不明さに拍車を駆けていました。こういう音楽を映画で…?という驚きと映像と音のちぐはぐさと唐突さはなんともいえない奇妙な味。役者たちは演技らしい演技はしません。パンフレットにありますが、プロの役者ではなく素人を撮っているということでした。

音響派とか即興音楽とかやっている人と当時、よく、ソクーロフの話題をしていました。何故か影響されあったわけでもないのに観ている人が多かったです。その音楽性に少なからずとも影響を与えていたと思います。私は影響を受けたと思います。そもそもソロの1stのタイトルは「精神の声」から取っていますから。
そんなわけで、音がそうとうヤバイのですが、特に「ロシアン・エレジー」では、後半、けたたましく笑う女性の声が唐突に入ってくるところとか鳥肌が立ちました。まるで亡霊の声をうっかり聴いてしまったかのようにギョッとさせられます。そして、その説明はまったくなかったりします。そのとき、銃弾はこちらに向かってきてカメラは泥の中へ。実際に内戦で実弾にあった状況をそのまま使っています。

ソクーロフの作品の特徴として私が驚いたのは、その時間の切り取り方です。「マザーサン」では主人公の息子がいったん外へ出たあと、家の中へ戻って帰ってくるまでの様子をそのまま流します。ふつう無駄だと端折るところを全部、観せてしまうのです。30秒以上何も起こらない画面を私たちは観つめます。そのとき、私たちは映画を観るというよりも「体験」させられていると気が付きます。

また、特徴的なのがカメラアングルです。カメラの視点というものが何を物語っているのか、一体、この視点は誰のものなのか、ということをいつも観客に問い掛けます。

そんなわけで、ソクーロフが気になってしょうがなくなった、私はユリイカの特集を買ったり、上映をほとんどみたり、翌年のユーロスペースであった「マザー・サン」の上映&サイン&握手会にも行って、蓮見重彦の話を訊いたりしました。その後、「オリエンタル・エレジー」(1995年)という日露合作の作品はNHKで放映されました。西荻窪の長屋で撮影されたそうで、私の友人の妹がその手伝いをしていたという話をあとで訊いて羨ましかったことを覚えています…くぅぅう。
NHKで放映の際、ナビゲーターとして大林宣彦が出演しており、私の記憶が確かなら最後に日本の歌をソクーロフと数え歌っていました…。ちなみにこの作品は制作期間も短く、制約もあったためか、その後、再編集されました。「ロシア人が日本のノスタルジーを再現!」みたいな切り口でした。

その後、タイミングを逃してしまい、オリエンタルエレジー以降の作品を私は観ていません。いつも気が付くと終わった頃に上映に気付くという体たらく。そんな日々を送っていたとき、不意に見ていた朝のワイドショー「スーパーモーニング」(北朝鮮情報にご執心&右翼)で紹介されたので驚きは3倍おにぎり。
しかも、天皇をテーマにした作品として取り上げられ、まさか、こんなふつうのTV番組でソクーロフにお目にかかれるとは!これならきっとでかいところでも上映してくれて観にいきやすいだろうと思ったのですが…。テーマがテーマだけに上映されないくさいというわけで一番、上に戻ります…。ハァ…。

つらつらと記憶を頼りに書いてみました。ソクーロフは確かに万人向きの娯楽作品ではないのですが、今回のようなテーマならきっと、多くの人にもひっかかる部分があって良かったのに。何とか上映されないだろうか…とい淡い期待を持つのでした。
「太陽」は観れませんが、http://www.pan-dora.co.jp/fatherson/は4月29日(土)よりユーロスペースでレイトショーされます。それに併せて15日(土)他の作品も観ることができます。私は「日々はしづかに発酵し…」をもう一度、観ようと思ったら、その時期、オーストリアに行っているということが発覚!観れない!!!!ガーン!!!!!!ショックです!!!!!!!!ガーン!!!!!!!!!!!!!!!

*1:いち早く紹介していたのは川崎市民ミュージアムです。その頃は「日蝕の日々」というタイトルでした。