吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

映画『蟲師』が今から気が重い理由

 いたるところでそろそろ大友克洋監督作品『蟲師』の評価やレビューが散見されるようになってきましたね。春ですね。それは関係ないですが。今から私は気が重いのには理由があるのです。

 この映画、けなされることはあっても褒められることはあまりない映画だろうと予測できるからです。

 と、いうのも大友克洋に対しての世間一般の評価にズレがあるからしょうがないわけで、ほとんどの人がまた『AKIRA』と比較するだろうからガッカリするだろうということです。もう、はっきり言っちゃうけどね『AKIRA』しか観てない人は観に行かないほうがいいですよ! 落胆を確認するために行くとか不毛だからやめたほうがいい。期待してないのに行って「ほらやっぱりつまらなかった。」とやったところでもともと期待してないんだから損してないんだし、いいじゃないか。期待しないで行ったら良かった!なら得だけど。世界樹にならって書けば、

 「君たちは、この映画が面白いと信じて観てもよいし、観ずに立ち去るのも自由だ。」

 と、思うんですけどねえ。もちろん、建設的な批判、批評があるならいいんですけど。たいていの批判って、読めば読むほど「それが大友らしさってやつじゃあないか!」というポイントなのでそもそも批判している人用の作品じゃあなかってだけなんですけどね。きみたちの抱いてる大友克洋ってのは幻想なんだよ!と言いたくなってきちゃう。たいていが『スチームボーイ』(04年)がクソだったから今度もクソだ。『AKIRA』(88年)のときの才能はもうない…みたいな口調なので読む価値なしなんですが、じゃあ『ワールド・アパートメント・ホラー』(91年)のことをスルーするのはどうなのよという。

 まさか、忘れたとは言わせまい!『ワールド・アパートメント・ホラー』を。大友克洋の実写商業作品*1ですぞ!で、これって当時、どういう扱いで紹介されていたかというと私の記憶が確かなら(確かなハズ)、名古屋のシネマテークという東京で行ったらユーロスペースのような場所で単館上映されていただけですよ!『AKIRA』発表後の91年の作品がですよ?今なら考えられない小さな扱いです。大友克洋の「実写監督作品」として比較するのであれば、アニメではなくこっちと比較してもらいたい。そのクッションがあるかないかで全然、落胆度が違うと思うし、何が撮りたい人なのかわかると思う。

 『AKIRA』というのは本当に当時、設定資料集や雑誌の特集やらがすごいことになってて「歴史」として残っているので、それを見た後年の人たちが「なんだかわからんがすごいものらしい」という先入観と過大評価で、大友克洋作品を観るから落胆するのであって、大友克洋は『AKIRA』のころからまったくブレずに大友克洋でしかない存在なのです。才能の枯渇もクソもなくって、大友ワールドは大友ワールドたりえるもので世界の大友神の創りし世界を神様自ら破壊し尽くすという宗教観を受け入れなくてはいけません。他に神などいないのです。ジブリを求めちゃいけません。その大友的妄想をわれわれは楽しめばいいのです!バーン!

 とはいえ、実は私、『蟲師』という作品が苦手なんですよね…。これは私が水木しげる好きなため、蟲という概念に関して違和感を覚えるのと、登場人物を追う目がセクシーすぎるというところが気にかかっちゃうのでした。なので、原作どおりの作品を大友克洋が撮影するならあまり興味がないのです。大友克洋が制作に関わった『メトロポリス』や『スプリガン』のように何をどうやっても大友節。その作品の世界を緻密に作り上げてすべて破壊!破壊の美学!というところに落ち着いていれば私とてはオールオッケー!観客置き去り。共感ゼロ。それが大友克洋の美学!つーか、ほんと不思議なんだけど、『AKIRA』を傑作だと思って未だに大友克洋作品を比較するときにそれを引き合いに出す人って『AKIRA』のどこが好きだったんだろう…?すごく不思議なんだよな〜。上映当時はいくら話題になったっていっても『ホットドックレス』で臨時増刊号で特集されたりどっちかっていうとサブカルお兄さんお姉さん音楽好きで子供アニメとは違う大人の映像を期待…みたいないノリだったんだけどなあ。『ワールド・アパートメント・ホラー』も宝島とかで特集されてたわけで。そんな一般的な作品じゃないんだよなーもともと。私が思うに過大評価されたのって、確実に『攻殻機動隊』(95年)以降のジャパニメーションの海外からの評価があってからで日本で独自に評価なんてされてなかったと思うんですが、詳しい人教えてください。『AKIRA』当時は小学生だったので。後追いで調べてもなかなか情報が正しいのか自信がないのでした。

*1:その前には『じゆうを我らに』があります。こっちは自主