吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

スイス、チューリッヒ 三日目

寝過ごした!完全、に寝過ごす。完全に二日酔い。吐き気もかすかにするがお腹がすいて仕方がないため、朝ごはんを食べに行く。オレンジジュースやパンやたまごをしこたま食べる。余計に気持ちが悪くなっただけだった。しかし、この部屋中に散乱した洋服をバックの中に詰めなくてはならない。ぐわんぐわんと回る天井。久々の悪酔い。助けてくれる味方はいない。自分のことは自分でしなくては成らない。大人なんだからあたりまえだ。その前に、その前にただ、あと5分だけ眠ろうと思ったのが運の尽き。気づけばチェックアウト10分前。あわただしくバックにそれらをごちゃまぜにつめ、風呂にも入れず後ろ髪引かれる思いでチェックアウト。とほほ。で、バックを預けてチューリッヒの街へ繰り出す、というよりも、追い出される羽目に。
てくてくてくてく歩いて、銀行で金を替え、ショッピングパトロールと洒落込む。
石畳の町をてくてくとただ意味もなく散歩する。スーパーでキウイジュースを買って飲む。二日酔いにダイレクトに利く。空は青く。空気ははりつめている。ちょうどいいキリっとした寒さだ。耳が少しだけ痛い。それでも無視して町じゅうを練り歩く。ぐるぐるぐるぐる散歩する。お店をしらみつぶしにマーキングする。知らぬ場所でさまようのは楽しい。誰も知らぬ人ばかり。見知らぬ文字の見知らぬ風景。異邦人感覚が妙にしっくり来て肌に合う。はりつめた青い空を見上げる。何にもないし、何も語らない。空しい空だ。私のような目的もない旅人にチューリッヒの空は優しかった。
鳥と戯れたり、川沿いを歩いたり、落ち葉を踏み踏みしてみたり、ひととおり町の様子を知り土地勘を養う。特に店に入るわけでもなく、ただ、漠然と3時間ほど歩いているうちにチェックイン時間になったので、ホテルに戻りタクシーを呼んでもらって、次の滞在先のホテルへと。
行きのタクシーで運転手が言っていたあんまりガラがよろしくない方へタクシーが向かい、やばいんじゃないのかとびびる。実際にホテルのフロントは実に愛想が悪いし、部屋も80年代トレンディドラマ風。W浅野でも出てきそうなカフェバーみたいなつくりでスイスらしさが微塵もないが、安い。
しかし、だいぶ、駅から離れてしまったのが気になる。
とりあえず、暗くならないうちに近くを散策して現在地を把握しようと町へ出る。目の前にCOOPという生協と変わらぬ名のスーパーマーケットがあったのでラッキーと思い、そこで食料と酒を調達さえすればなんとか今日はやりすごせるぜ、と思う。が、しかし、そこはスーパーではなくスーパーの倉庫であった。なんにも買えないじゃあないかと肩を落とす。が、このままでは負けは決定。KOといったところである。負けるわけにはいかない。この勝負。私はいきりたち。なぜだか駅まで歩き出した。シティーと書かれた看板を目印にずんずんと行く。昼間あんまり寒くなかったからいい気になって、今、私はこのダウンジャケットの下に半そでのTシャツのみというなんとも軽率な格好である。そのシティーガール的軽薄さに旅なれた自分を演出、か。いったい誰が見ているというのだい?そんなセリフは聞き飽きた。
中心部までは30分くらい歩いただろうか。思ったよりも近かった。途中におしゃれな店を2、3軒見つけたのも飽きずに歩けた勝因であろう。さらに負けるもんかと駅の下でお買い物。ビールとワインとシナップスを購入。次いで鳥のローストと焼き栗を購入。さらにミネラルウォーターを買いあさる。いいかげん、重くなったため、帰りはトラムで行くことに。とかく、ストレートにあの角まで行ってしまえば何とか成るに違いない。歩いてもよいが、2、3駅乗るだけでもずいぶん違うだろう。初一人トラム!って前にウィーンで乗りましたが。
目を凝らしながらピンと緊張し、見知った場所で降りる。
よし、ここからこの四つ角のどれかを曲がれば・・・・って・・・・どこを曲がるのーーー!?途方に暮れた。