吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

決定稿のいっこ前が掲載されているので誤字脱字が

http://www.webdice.jp/dice/detail/1568/

ありますが、すでにアップされています。

月曜に修正が反映されると思いますが、読者の方からご指摘のメールがきたのでお知らせしておきます。

私が原稿を3倍くらい書いて書いたあとも調べたりして、修正をぎりぎりまでやっているせいですが、わりと、いや、かなりイージーに原稿を掲載しているので、今後はもう少し体制を整えたい。

一応、週一で書いているんですが、まだペースがつかめなくて、書きたいことがありすぎて、余計な脱線が激しくなりすぎるという欠点が……。ウェブなので、おもしろいところは生かしているんですけど、なかなか。読者の方がどこまで着いてきているのか謎です。おすすめのマンガとかあったらぜひとも逆ソムリエしていただきたいです。

次回以降の更新に反映させるかも知れませんが、一部、ぎりぎりにわかった事実などふまえて書いた一文を書いておきます。

1960年代、女性マンガ家の活躍の場は少女マンガ誌に限られていた。では、やまだ紫のような作風のマンガはどんな雑誌に掲載されていたのだろうか。

手塚治虫が創刊した「COM」は、「まんがエリートのためのまんが専門誌」をキャッチコピーにしたマンガ雑誌で、少年・少女マンガにジャンル分けできないようなマンガが掲載されていた。同誌は新人発掘、育成に力を注いでいた。特に「女流漫画家」と称された女性のマンガ家に注目し、ライバル誌であった「ガロ」にはない特色を打ち出していた。

それを裏付けるように、1967年の「COM」12月号では「女流新人まんが家競作集・木枯」と題した特集が組まれており、岡田史子をはじめとし、竹宮恵子白石晶子、福田活子の4名が「四女流作品がみごとな力を発揮し、男性群をおさえて『COM』誌上に躍りでた」と紹介されている。ちなみに、当初の企画名は「新人まんが家競作集・木枯」であったが、選出されたマンガ家がすべて女性だったため、タイトルに「女流」をつけ変更したそうだ。この「女流マンガ家」という言葉は、今や絶滅しているが、当時のマンガ雑誌を読むと頻出している。それだけ、女性が「少女マンガ」以外を描くこと自体、珍しかったのだ。

そんな経緯があったからか、『COM』はマンガ家を目指す女性にとって、魅力的な雑誌であったのだろう。やまだ紫も『COM』を目指し、1969年に同誌にて「ひだり手の…」が入選、めでたくデビューしたのだった。

1970年頃はまだ、やまだ紫の描くような「大人の女性の心情」を描くマンガ家は居なかった。岡田史子やつくりたくにこのように前衛的であったり、少女マンガの延長であったり、SFであったりする作品はあったが、女性性が強調されるような、今日「ヤングレデュース」ととジャンル分けされるような作品はなかった。後述もするが、「ヤングレデュース」のブームは1980年半ばから1990年代にかけてであり、やまだの作風がいかに早かったのか、時系列に並べてみるとよくわかる。

その後、やまだは、結婚、出産による休筆を経て、1978年より「ガロ」にて、『ときどき陽溜まり』で、再スタートすると堰を切ったように次々と傑作を発表する。代表作の一つ『性悪猫』の連載がスタートした。

■「ヤングレデュース」って何?
女性の内面を表現した詩のようなモノローグ、自分の価値観を持ち、周りに迎合しない女性像、少女マンガのようなディフォルメはなされず等身大の女性の描画、ドキリとさせる魅力的なセリフ……。やまだ紫作品の特徴を持つマンガは、今でこそ「女性(向け)マンガ」もしくは「ヤングレデュース」というジャンルに分けられる。しかし、こう呼ばれ、ジャンルが確立するのは、もう少しあとだ。

1986年に創刊された祥伝社の「フィール」(現在の「FEEL YOUNG」)、集英社の「セブンティーン」から発生した「YOUNG YOU」(2005廃刊。現在は「YOU」「コーラス」に引き継がれている)の2誌が、ヤングレディース界を引率するかたちとなった。「フィール」および「FEEL YONG」は、エロ描写が多めで毎号、女性の陰毛が描かれたマンガが掲載され話題に。執筆者は、岡崎京子桜沢エリカ内田春菊安野モヨコ二ノ宮知子南Q太やまじえびねなど。一方、「YOUNG YOU」は、エロ表現はほとんどなく、大人版「少女マンガ」という感じであった。執筆していたのは、「セブンティーン」で、すでに人気作家だった原田智子(後に「FEEL YOUNG」に移籍)、岩館真理子鴨居まさね榛野なな恵西村しのぶ榛野なな恵山下和美など。「マーガレット」など、主に集英社の少女誌で活躍していた作家が、表現の幅を広げる場としてステップアップしたかたちだった。

この2誌の創刊を機にレディース・コミックではない成人女性向けマンガが支持され、少女マンガで描けない「性」「エロ」「仕事」をテーマにした新しいマンガが生まれた。「女性向けマンガ」が、もっともエキサイティングだった時期である。