吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

そんなこんなで一回、ビエナで飛行機を乗り継ぎ、ベルリンに到着。ベルリンは寒かった。想像以上に寒かった。防寒を甘くみた私に寒さはこたえた。身に染みた。
クリストフの誘導でそれぞれてんでばらばらに宿泊地へ。私は都心部にほど近いミュージシャンばかりが住んでいるアパートに向かった。音楽家版ときわ荘といった感じだろうか。
真っ暗な廊下と階段を上がり2F。海外はどこでもそうだけど恐ろしく暗い。日本のぎらぎらした蛍光灯の明かりなんてめったに見ない。何でも白日の元に照らす必要はないだろうとも言えるが、闇の濃さが日本とは違うような気もする。
主のアンドレアはコンサートに出かけていて不在。今日はここで一人きりで過ごすのであった…。
アパートに荷物を置いて、近くのカフェでみんなと落ち合った。今回のメンバーは秋山徹次、杉本拓、中村としまる、Sachiko.M、大友良英。一日遅れて、宇波拓がやってくることになっている。
夕飯はそのカフェでやけに塩っ辛いミネストローネスープ、ガーリックトースト添えを食べた。
その後、パーティ会場へ行き、なんとなくだらだら無為に過ごす。誰かの家らしいその部屋でライブなどが行われたらしいが私がついたころにはすでに終わっており、なんとなくぼんやりと過ごしているだけであった。うすぐらい部屋のため即効で眠くなる。眠いはずだ。日本時間で朝の7時。オールナイトの早朝はいつだって眠いはず。早めにおいとまさせていただき、アパートへ戻る。
まっくらな階段で足を踏み外しそうになりながらよろよろ階段を上る。どうも寒さにやられたらしく調子がかんばしくない。長時間のフライトのせいともいえるがここで調子に乗って無理をすると、途端に具合が悪くなるので要注意だ。
私は風呂に入ってさっさと寝ることにした。しかし!風呂の湯が出ないのである。ぬるーい湯が出たかと思うとそのあとは冷や水ばかり。これでは風邪をひいてしまうではないか。追い討ちをかけるように室内のヒーターが止まった…。私は寒さとひもじさとさみしさを胸に抱き、何枚も服を重ねコートを着て首にはマフラーをぐるぐるまきつけ横になった。ムロン、寒くて1時間後に起床。すがるような気持ちでバスルームへ向かう。風呂の湯の出を確かめると今度はしとどに湯が溢れ出した。しかし、どうにもぬるい。だが、このままでは凍え死ぬだけだ。仕方がなしにそのぬるめのシャワーを浴びることにした。みるみる水へと変貌するシャワー。5分くらいですぐに出る羽目に。それでもシャワーを浴びる前よりは体温が上がり、凍死の危険は遠いた。またもや、防寒具を完璧に身にまとい直ちにベットへもぐりこみ、眠りに落ちた。
2時間後。
早朝6時。部屋のヒーターが復活し、暑くて目が覚める。ぐるぐるまきのマフラーをふりはらい、コートを脱ぎ捨てた。何回、睡眠が寸断されればいいのだろう。ホトホトまいりながら私は眠りにつくのであった。こうして、一日目の夜が過ぎていったのであった。