吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

会場の近くの「朝日」というオモシロ日本食屋でごはんを食べたあと、としまるさん、キャップ、私で宇波ガイドによる観光へ出かけた。シュテファン大聖堂という禍々しく黒く煤けた呪われた場所へ。ドラクエに出てきそうな教会である。
目玉である地下墓所カタコンベ)には数万体(いや、もっとだっけ?)が無造作に詰め込まれていた。王様やえらいひとの死体は別の場所で銀の鍋につめこまれことこと煮込まれているみたいに丁寧に扱われているのに対し庶民の死体のあつかいの乱雑さとは雲泥の差だ。全体的にヒンヤリとして、カブトムシの幼虫のにおいと鉄の錆びたにおいがする。ガイドの人がずっとまくしたてていて、死体の鑑賞がままならないのが気に入らないが、たしかにここに置いて行かれたら気は狂うのかも知れない。オソロシイ密閉感。昔、心霊現象の番組で宜保愛子が訪れていたのを見て以来、気になる感じの場所であったため、ここに来れて感無量である。
「これって、家族が嘆き悲しんだりしないのかなあ、こんなに邪険に扱われて・・・」と哀れんでいたら、としまるさんに「家族で一人、ペストになったら全員死亡なんじゃないの?」と言われて妙に納得する。それくらい死屍累々とした地獄絵図であったのであろう。その時代に生きなくてほんとうに得したと思ったよ。大量の死体は死刑囚が清掃し、地下の穴へ放りこみつづけ、そして、死刑囚も一緒に生き絶えたのであろう。ドラマだなあ。
さらし者にされた骸骨を哀れむこともなく、ただただモノのようにしか思えない。それほど、人の死がだだくさだ。怖いというよりも無力感にさいなまれるだけだ。
その後、としまるさんとわかれ、宇波ツアーの一行は時計博物館へ。地味めな時計のゼンマイなどに心躍らせる男子諸君。「針が時を刻む音が良い」などと、正気の沙汰とは思えない宇波くんの発言やキャプテンの「時間のことをもっと考えなければなぁ…」というつぶやきを訊く。
全体的に雑な仕事のものと、丁寧なものとの差が激しかった。いいものはちょっとキチガイみたいな精巧さで指地図男(狂った時計)ちっくな出来映えであったが、てけとーなものはてけーとーなドンキ・ホーテで480円とかなノリではあった。時計マニアってすごいなあと思う。
個人的に印象深かったのは蝋燭に鉛玉がしこんであって、蝋燭に火を灯し、だんだんと蝋燭が溶けていくとその鉛玉が下の受け皿に落ち、時間を知らせる、というもの。地味すぎてオモシロイと思った。夜中にコト、コトンと落ちて時を知らせるなんて豊ですなあ。
その後、すぐ隣にある人形博物館へ移動。二人とも興味がない上、気持ちが悪そうにしていたが、私は十分に楽しめた。伊藤潤二のマンガ「うずまき」に出てくるストーカーの少年の成れの果てのような四肢が真逆になっている人形や体が日傘になっており、すっとんきょうに頭と足を延ばしていたり、妙にリアルな表情の日本人形など様々だ。わざと人を不気味がらせているとしか思いようのない悪趣味な人形が満載で心底、楽しめた。しかし、カタコンベの呪いからか、デジカメの調子が著しく悪い…。ズームが効いたり効かなかったり不安定だ。
その後、ユダヤがらみの博物館の前を通り過ぎ、リハのある宇波君と別れ、私とキャプテンはネットカフェへ。さすがに昨日の今日で宇波君のPCを借りられないし、まあ、メールチェックだけでもしておこうということで…。1時間ちょっといただけなのに10ユーロも取られなんだかすごく不本意であった。