吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

三十路女子マンガが面白い!雁須磨子『かよちゃんの荷物』

http://www.webdice.jp/dice/detail/2068/

「三十路女子」、「アラサー女子もの」というマンガのジャンルがなんとなく確立されています。

こういうマンガで面白いのはモラトリアムを描いているからじゃないのか、という気がしてきます。単なる学生のモラトリアムとは違って、主人公の年齢が高いと、人生の酸いも甘いも経験しているので自覚的に他人に優しくしている、という状態が心地好いのかもしれません。はじめから成熟しているわけではなく、成熟の結果として物語があるというか。決断なんかしたくない!いや、むしろ、決断したあとの世界が見たい!みたいな。

そんな流れで、佐々木倫子動物のお医者さん』『Heven?』『おたんこナース』、大島弓子『サバ』シリーズ、倉多江美『お父さんは急がない』『続 お父さんは急がない』『競馬場へ行こう!』にも触れています。

倉多江美の『お父さんは急がない』シリーズは当時、すごく衝撃的で「うわ、こんな何も起こらない話が面白いとは……」と思って、コーフンしてその後もいろいろ人にすすめてはいるのですが、この面白さがなかなか共有できないんですよね。でも、『かよちゃん』流れで、「モラトリアムマンガ」というジャンルを勝手に確立して(笑)すすめると、わりと腑に落ちてもらえる気がします。

マンネリじゃなくて、モラトリアム!

動物のお医者さん』も最初、面白さがまったく分からなかったんですが、このマンガ、マンガをぜんぜん読まない同級生(高校時代)が面白い!と言ってすすめてくれていて、ぜんぜん読まない人が面白いというくらいだから何かあるんだろう、と思って心の隅に置いて放置していたのですが、数年後、文庫版になったものを読んだら突然、面白さが分かった、というケース。これも「モラトリアム」だから面白いんだ!という「気づき」があったからなんだけど。

ここで、注意したいのは何にも起こらないことを指す「アンビエント」マンガとの区別。「アンビエントマンガ」については、タナカカツキの回でも少し触れているけど、こっちは「終わりがない」ない、もしくは「終わりを感じさせない」のが特徴。「モラトリアムマンガ」とは必ず「終わりがある」というところがポイントかなあ。若干、切なさが入っているような。この定義でいくと岩館真理子さそうあきらなんかも「モラトリアムマンガ」をたくさん描いているといえる。

今回紹介した『競馬場へ行こう!』がいい例だとは思うんだけど。これも実は手に入りにくいったらありゃしない!けど、ほんとうに良い話。どっか私監修でマンガの復刻させてくねえかなあ。いいマンガ、今読んでほしいマンガいっぱい知ってるYO!

まあ、そんなごちゃごちゃしたことを考えずとも雁須磨子はやっぱり面白い!三十路女子じゃない人にとっても『かよちゃんの荷物』は面白いので、ナイトキャップがわりにベッドのお供におすすめしたいです。