吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

寄稿しました。『漫画家本Vol.9 細野不二彦本』

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漫画家本vol.9 細野不二彦本 (少年サンデーコミックススペシャル)

〈 書籍の内容 〉
漫画と漫画家を徹底解剖する!!

あらゆるジャンルを描きつづける巨匠を大特集!!

(contents)
【ロングインタビュー】~子供の頃に好きだった漫画の話から「スタジオぬえ」時代の逸話、そして最新作『バディドッグ』まで~(聞き手・島田一志)

【細野ヒロイン・イラスト・トリビュート】4人の人気漫画家が細野不二彦が生んだ魅力的なヒロインたちを描く!
曽田正人×魔子(『さすがの猿飛』)/青木俊直×あゆみ&リンダ(『GU-GUガンモ』)/三原ミツカズ×サラ(『ギャラリーフェイク』)/松本次郎×詩織(『電波の城』)

【特集『ギャラリーフェイク』】
細野不二彦インタビュー/総論・タニグチリウイチ高橋克彦インタビュー/中野京子インタビュー/『ギャラリーフェイク』全美術品リスト/名場面集ほか

【COMIC『レンタルプラネット』再録】
単行本未収録の傑作SFを再録!

【グラビア・江戸東京たてもの園探訪記】
以前から興味があったという「江戸東京たてもの園」を細野不二彦が訪問!

【特集 細野不二彦青春三部作を読む(仮)】
細野不二彦が80年代に描いた『あどりぶシネ倶楽部』『BLOW UP!』『うにばーしてぃBOYS』の3作を「青春三部作」として特集。
細野不二彦インタビュー/森直人、伴ジャクソン、島田一志による作品論/曽田正人萩生田宏治大林宣彦によるエッセイ/『あどりぶシネ倶楽部』第1話再録

細野不二彦主要作品ガイド】
伴ジャクソン/浅野智哉/山科清春吉田アミ/島田一志

細野不二彦単行本リスト】

 

電波の城」の作品論「お前はただの現在にすぎない」を寄稿しました。書いていた時に序盤からすでに3卍ではなく3万字を越える勢いで、書き過ぎてしまいどうしていいのかわからなくなって頭を抱えてしまい、そういうことこそが細野不二彦の醍醐味なんだよなあ。と、思い返し、大幅に削り、天宮詩織の生き様とその心情についてのみ言及する感じになりました。 ほんっと、要素がぎゅうぎゅうに詰め込んであって、知識欲を刺激しまくりまくる細野節。まさに知の巨人。また本人自ら作中でもっともわかりやすく説明しきってしまっているため、要約することすら躊躇われてしまう。これまでに書いた河合克敏本や藤田和日郎本の論考とはまた違った切り口になったと思います。ほんとうはテレビ業界の話とかテレビというメディアがどう移り変わっているのか、など書きたかったし、調べたりしていたんですが。かなしい。しかし、インタビューや他の記事や原稿でしっかりいいたいことはフォローされていたので、まあ、いいかなあという気にもなっているところです。せめてという抵抗として、詩的跳躍でサブリミナルに断片が散りばめるくらいで、まあ、一言に言えば、「電波の城」の表紙のデザインが「お前はただの現在にすぎない」であり、この言葉もロシアの革命家トロツキーの言葉であり、作品内のタイトルがすべて文学作品や歌などの引用になっていることは、「電波の城」自体がテレビというメディアを作品構造に落とし込んでいるからなんだろうなあと。

 これを、がんばって一言で無理やり言えば天宮詩織のテレビ革命記であり、それを記すのは本人ではなく、ジャーナリストの仕事なのである。

 かつて、テレビはお茶の間に革命を起こすことができる装置としても機能することができたがコンプラがどうとかこうとか、広告主に気を使いはじめたころに死んでしまったのだろう。もっといえば、オウム真理教の報道のときにテレビジャーナリズムは死に追いやられ、インターネットへと引き渡されたが、そのインターネットも今やジャーナリズム死に体だ。YouTubeの規制は激しくなるいっぽうで、規制理由についてはなにも説明のないままチャンネル登録者数100万規模の大手サイトも突然、広告がはがされるという現状、やっぱり革命でもおきなきゃやってられないよ! という気分で書いてました。

二〇世紀が始まったばかりのシベリアに、二〇歳の革命的楽観論者がいた。一九世紀は楽観論者をあざむいた。だから彼は、「二〇世紀」に未来を賭けた。その二〇世紀がやってきた。
この新しい世紀は、しかし、出現した瞬間に、憎しみと殺戮、飢餓と流血をもたらした。血まみれの二〇世紀は、若き楽観論に怒号する。
「降伏せよ、哀れな夢想者。お前が長いあいだ待っていた二〇世紀、お前の<未来>であるこのわたしがやってきたのだ」
「いや」と卑下することを知らぬ楽観論者は応える、おまえは――おまえはただの現在にすぎない。(I・ドイッチヤー編 山西英一訳「永久革命の時代」より)。

 金八先生の「腐ったミカンの法則」とかもあれも革命の話だったのかと。みなさん、革命の話をするとけっこう、元気でますよ。

 

 まあともあれ、天宮詩織という最高にイカした女について書ける機会があってよかったです。平成という今年が終わる中、いま、「電波の城」を読み返すのはうってつけですよ。