吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

読書の秋にオススメ本!エロの敵とウェブアニメーション大百科

エロの敵安田理央雨宮まみ

購入して雨宮さんにサインをもらおうと思っていたら、翔泳社の敏腕編集人・毛利さんに献本してもらっちゃいました。うっかり買ってしまってダブらせている人がいつも多いのがポイントです。しかし、オモシロい本は興味のある人のところに集めておいて、その人がさらに興味を持ちそうな人にプレゼントすると楽しさは広がります。

 ってなわけで、読みましたー。私はエロメディアについてほぼ知識ゼロということもあり、一言で感想を言えば…

 たいへん!オモシロかったです。

 エロ本文化に関してなどはなんとなく知っていることもありましたが、AVに関してはトゥナイトどまり。停止していた知識が広がっていきました。今こそ、トゥナイトを復活させて欲しいです! そして、AVはオモシロそう!と思わせる力強さがありました。
 雨宮さんの熱い情熱が溢れまくっている書き方から、どうしても好きなものについてちょっと言わせてください!みたいに乗り出し気味になってきて、その過剰な熱が注釈でスパークしているところなど読み応えがあり、ついつい手に汗握ってしまいました。特に、私のような業界を知らない人に興味を注ぐポイントはしっかり抑えてあるのでこれからエロについて知りたい!という人にも、知らない業界のオモシロイ話が読みたい!という人にもオススメです。本人は意識してるのかわかりませんが、独特の「天然」ボケな感じがあるところも見逃せません。なぜ、そこまでそれにこだわるの?ってところに雨宮まみの文章の個性があります。ライターの顔が見えると文章力は強みだと思う。もっと、読みたいと思いました。先入観がなかったということもありますが、安田さんの文章とトーンを合わせてあるので共著とはいえ、違和感はあまりありませんでした。

 すでに出版されているものにあれが足りないこれが足りないと言っても仕方がないですが、ちょっと気になったのが、ポルノ映画に関する記述が極端に少ない(というかほとんどない)のが気になりました。もしかすると、語り尽くされたネタでエロメディア通の人にとっては今更感があるのかも知れませんが、AVが出る前のオナニーコンテンツとして、無視できないよーな気が(素人考えですが)するので、ざっとでもいいから、知りたかったです。
 と、いうのも私が高校生の時によく映画館でにっかつロマンポルノの名作特集とかやってて、(石井輝男(追記:は東映でした!すみません…)や荒木経惟山本晋也などの作品を観ました)エロのふりかけさえかけてれば好きなことできる!というやけっぱちな作品が多かったのですが、その後、AVに流れていくわけでこの辺の時代背景なども知りたかったです。とにかく裸がありがたかった時代。そのありがたがたさを知りたかった。今度、イメージフォーラム武智鉄二の作品が一挙、公開されるのですが、当時の熱狂的なエピソードとかを読むと、この手の作品がどう大衆に受け入れられていたのか気になって仕方ないです。私が。

 あと、インターネットに関するコンテンツももう少し知りたかった。個人サイトなどまったく、わかりませんがきっと、伝説的なサイトとかあるんだろうなーとは想像しても、なかなか文脈が読めないとわからないので紹介してもらいたかったかも。それか、もう、AV〜インターネットの項のみでもっと充実させてくれても良かったかも。安田さんの文章も雨宮さんの文章も読みやすいので、もっとぶっ飛ばしてもらっても、ぜんぜんついていけそうです(笑)。それともうちょい、キーワード解説が知りたかった。この業界用語がけっこう知らない私からすると面白くて「ハメしろ」とか知らなかった用語の解説が楽しかったです。

 なんというか、好きな人にしか好きなものが伝わらないでシーンが閉鎖していくというのはいたるところで起こっている現象です。特にインターネット以降の消費行動については、エロメディアだけでなく、すべてのメディアにいえるようなことで、それが新しいオモシロイモノが生まれにくい状態になりつつあるというのは危惧すべき状態だと思います。これはエロに限らず。インターネットが便利すぎるんだよ!バカ!という一方、金を払うことにせこくケチくさくなりすぎたくないもの。自分が好きな文化を守るということをもっと尊く思ったほうが人生は豊かになると思う。

 なので「AVは男のものだ!」とか「女が語るな!」とかいったユーザーを限定するような頭コチコチのセリフを見てるとおまえのためにはなっても、業界全体には悪影響だろうと思います。誰がどこでどういうふうにでも興味を持っていいんです。そのきっかけ、タイミングを作るという点でこの本の功績を称えたいです(エラソウだな…)。
 そして、ここで足りねえーよ!と思った同業者の方はAVマニア向けにぜひ、この本を超えるものを作って欲しいです。不満は創造の母ですから!


ウェブアニメーション大百科 GIFアニメからFlashまで/ばるぼら

 こちらも毛利さんから送られてきて、時間があるとパラパラ読んでました。ばるぼらさんの解説でFlashをはじめとしたウェブアニメーションの世界に触れることができます。レビューの本数が328作品という狂った量です。ばるぼら節が効いていて見て見よう!と思わせる文章が小気味良いです。あまりに見て見よう!と思わせるので、逆に見なくてもいいかという気がしてくるのが私のいけないところですが。これで作品を知った気になってはいけません。途中に差し込まれる作家インタビューがなかなか意地悪な質問があったりしてドキリとさせます。

 さて、Flashアニメは大変、話題になったわけですけど、話題になった理由が「安い 早い そこそこのクオリティ」というイメージが先行しており、私の知り合いの映像作家の人に以前、話を伺ったとき、その現象を「業界内における価格破壊」と戦々恐々としていたのが印象的でした。実際、TVや雑誌などで紹介されている内容よりもそういったことが宣伝文句になっているケースが多いように感じます。
 もちろん、観ればわかりますが、そこそこのクオリティ以上の作品もたくさんあるし、無駄なコストをかけずに良作をハイスピードで制作し、旬のネタをクリティカルにヒットさせていくという良い面もあります。本著を読んでいると、もうちょっとその辺をアピールしていかないと未来はないんじゃないの?ということに気付かされます。

 正直、観る側としてはその作品にいくらお金がかかろーが、Flashだろーが、商業アニメだろーが、どーだっていいのです。オモシロイをもっと観たいだけ。だから、新しい表現やそれでしかない独自性のあるクオリティの高いコンテンツが望まれるでしょう。私はジャンルに限らず、ただ、オモシロイものが観たいです。

 ばるぼらさんというは文化の過渡期で玉石混合の状態に面白味を感じるようです。個人サイトについて書いた「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史」にしても、本著にしても伝わってくる時代の熱を記録していくのがばるぼらさんのしたいことなんだろうなーというのが伝わってきて、すごいなあぼくにはマネができないなあと思いました。

 以上、小学生の作文風に書いてみました。