吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

アンパンマンのふしぎ

最近、どっかのWebで(失念しましたごめんなさい)「ジャムおじさんとバタコはデキている」との一文を読み、ウケた。
その一言が発端になり人と話していたらアンパンマンのふしぎが気になりだした。ふしぎを言及しているうちに妄想が働き、アンパンマン界が少し身近になった気がしたのでその妄想を記しておこう。

西暦500×年。第三次世界大戦後の遠い未来。地球は病んでいた。最後の人間の種として改造された男が長いコールドスリープから目覚めた。
世界はすっかり荒廃してしまった。人類はすべて滅亡。残ったのはさる研究機関で特殊能力を開発された人造人間の男女二人だけだ。隣のカプセルの女のコールドスリープが解除されない。眠っている間に何か異変が起きたらしく、カプセルの自動制御装置が壊れてしまったのだ。無理に解除しようとすると壊れてしまう危険がある。しかたなしに、男は女のカプセルには手を付けずに箱船、アンパンマン号から外へ出た。

放射能で汚染された地球だが男は人造人間。あらゆる環境にも適応できるスーパーボディ。問題はないのだ。
まず、男はアンパンマン号のある近くにシェルターに赴いた。
シェルターには世界中の動物の種が収容されている。通称・箱船ノアプロジェクトの実験動物たちである。男は実験動物のコールドスリープを次々と解除し、シェルターの外へ放した。産めよ、増えよ。男の孤独を少しでも癒すために・・・。

それから半月たった。汚染された土地で動物たちはいっこうに繁殖しなかった。やれることはやったのに。この空気がいけないのか!?男は無力感にさいなまれていた。どうすればいいのか・・・。男は悩んだ。早く生産体制を整え、自給自足していかなければ予備のレーションがそこをついてしまう・・・。仕方なしに男は雄の動物を殺して食べた。
残ったのは雌ばかり。乳を出したり、卵を産んだりする雌は食べることができなかった。思えばその時の男の精神状態はかなり危険だったのだろう。突然、男は残された雌の動物たちを犯しはじめた。
「俺の精子で増えろ!増えるんだ!畜生!」
男は泣きながら動物たちを犯し続けた・・・。

その時、男に奇跡が起きた。男の精子が種を越え動物たちの卵子と結びついたのだ。神が奇跡をおこしたのか?それとも男の研究者がそもそも男をそんなふうに創ったのか?それは男にはわからなかった。
一代目の動物たちから人間と動物のハーフの子たちが生まれた。彼らは動物の顔を持ちながら知能は人間と同じ。動物人間なのだ。
男はそれから動物人間たちの育児に追われつつも自分の精子の研究に励んだ。研究の結果、男の精子にはどんな物とも結合する不思議なパワーが隠されていたことを突き止めた。男は驚いた。男は自分の精子を肥料に植物やバイ菌までもを育てあげた。そうして沢山の異形のものたちが生まれた。

ある日、男は思った。バイ菌にも男の精子が有効というなら発酵菌にも素晴らしい奇跡を起こしてくれるのではないか?
男はやおらパンをこねはじめた。こねたパンに自分の精子を少し混ぜ、発酵させ、焼いた。なんと、パンは生きていた!生きていたが目鼻口や脳味噌を持たないためか愚鈍な生き物であった。男は考えた。脳味噌に変わるモノとして「あんこ」を目鼻口を人間に見立ててパンの成形し、焼いた。
するとどうだろう!またも奇跡は起こったのだ。
そのアンパンは元気いっぱいにしゃべりはじめた。「ぼく、アンパンマン!」アンパンマンの誕生だった。

その後、何年か経った。
地球上は動物人間や植物人間がひしめいていた。一代目の動物たちは死んでしまっていた。その動物人間や植物人間たちが村をつくり、町をつくり発展していった。男も年をとり、青年から老人になった。
しかし、人口は増えたものの男の心は冷え切っていた。この世に純潔な人間が一人もいないのだ。彼女が目を覚ましてくれれば俺の気持はもう少し晴れるのではないか・・・男は思った。
その時、男に三度、奇跡が訪れた。女が目覚めたのだ!愛犬チーズと一緒に眠っていた彼女はコールドスリープに入った時と同じ姿のままだった。愛する彼女の目覚めに男は喜んだ。
しかし、年老いた男を女は受け入れることができなかった。
「あなただあれ?」
無垢たる笑顔で問う。男は自分の名前を名乗ることができず、黙った。目をやるとテーブルにジャムが目に入った。思わず男は答えた
「私はジャムおじさんじゃよ」
女はニッコリ笑った。
「私はバタコ!よろしくね!」
タコとジャムの物語がこれからはじまったのだった。

と、いうわけでアンパンマン界には人間が居ないのだ。
動物人間たちにも親はいない。ミミ先生は大人なのはけっこう早い時期にジャムおじさんがヤッたからか。
ジャムおじさんとバタコは結局、プラトニックなまま終わってしまうのだろう。バタココールドスリープが壊れていたせいで記憶が抜け落ちている。一緒に眠った男のことなど忘れている。そんな不毛な世界の不均等なギリギリのバランスでアンパンマン界は形成されているのだろう。ジャムはグランドファーザー。生き物たちの始祖である。

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これは妄想だ、気にしないでクレ。あと細かく突っ込まないでクレ。
私はアンパンマンのことなど詳しくもないし、これ以上、知りたくもないのだから。この物語を夢想しただけでもうじゅうぶんだ。