吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

かなりぼけーっと無為な時間を過ごしています。

ジャパンに居た時は忙殺されていたのでこのギャップがたまらなく豊かな気分にさせられてラッキー。結局、ホテルと会場の近所をウロウロとするだけで観光っぽいことはしませんでしたが、時間を贅沢に使ったという点では勝ったといえるでしょう。何に勝ったかはわかりませんが。常に忙しく何かを考え悩んでいたあの日々が嘘のように晴れて毎日が脳みその皺ゼロで一寸先も計算しないでゆっくり選んでゆっくり行動をして過ごしています。同じ24時間だのに、感覚的にはぜんぜん違います。濃密な濃い24時間であっという間に加速して終わってバタンQだったジャパンの時と違い、今は薄い曇った時間を塗り重ねてやっと形を成すような輪郭のぼけた日々。ゆっくりと丁寧に生きています。ゆっくりと丁寧に無為な時間をむさぼるのはとても豊かなことだと思います。怠惰ではなく。
そんなわけで飛行機に乗って、アムステルダムまで一直線にやってきました。飛行機の座席は3人席に一人きりだったので贅沢に肘掛を全開して横になってディズニーのアニメを次々と観ました。最初に観たのはリロ&スティッチでした。これはずーっと観たかったのですが、なかなか漠然と判然と過ごしているうちに見過ごした一本でした。予告をTVで観るたびに確実に泣くであろうと予測したとおりの感動ぶり。まあ、予言は当てるためにあるようなものです。
内容はマイノリティである主人公の女の子リロと正体不明のミュータントであるモンスター、スティッチが出会いお互いに成長していくという話です。スティッチの改心ぶりは急展開すぎなのと最初から見た目がかわいいじゃないかということも災いし、まったく悪の面が強調されていないところがディズニーらしいといえばディズニーらしいのですが、私としては星のひとつやふたつぶっ壊して罪の意識で煩悶としてから改心しやがれとか思ってしまいました。あと、スティッチの吹き替えの声がむかつきましたがそんなことに気をとられているようではディズニーは鑑賞できません。多分。
で、悪い人なんてこの世にはいないのよ、誰もに存在の意味があるのよ的な人類愛にも似た気分になって気持ち良く終了。こういうハッピーエンドは全然、嫌いじゃない、むしろ大好物なので酒もすすんだことも幸いしそれから怒涛のディズニー強化月間つーか強化時間?が開始。次は何を観る?ということでピノキオを選択。子供のときに観たっきりで忘却の彼方。忘れた記憶を思い出すべくスイッチオン。
前半部分に出てきたおじいさんの鳩時計のシーンの音がやけによくって何度も何度も聴き直してしまった。この部分のコンパクトディスクがあるのなら欲しいなあ。とか思い。
で、ピノキオは良心と両親をかけてりょうしんがない子供、りょうしんは自分で見つけるもの、選ぶものだよぅというよーな教訓をやんわりと残しました。ガキは不完全な生き物でそれをサポートするりょうしんが必要なんだよバーロー的な話。良心が悪い心よりもずっと軟弱なところがリアリティがあって良いですね。勧善懲悪的な感じじゃなくって、救われない人もいっぱいいるところとか。最後の鯨のシーンの水しぶきがとてもダイナミックで良かったです。これは自分の不完全さに気がついていないある意味幸福な子供のお話。それは未熟さ。指摘する大人は成熟。おじいさんの役はあきらかにムツゴロウさんじゃなくちゃ嫌だよ。おじいさんの妄想きちがいの夢想かもと思わせて終わるところも良い。
で、次はダンボ。ダンボも実はちゃんと観てないアニメだったので観ることができて良かった。こちらは個性的な耳(=才能)を持った子供が他人との価値観に悩む話。救われるのが親がその才能を揶揄するのではなく、絶対的に良しとする姿勢でそのことにより村八分にされても直、強い母親。ちなみに父親はいません。ダンボはずっと自分の耳のせいで母親が拘束されたと気に病んでいるのだけど、はじめてあったねずみにその耳を褒められ、自分のアイデンティティを確立して確信していきます。よい友人(客観視)を得ることで自身に自信を持って空を飛ぶ様は拍手喝采。良かった良かったと手放しで涙ながらに思いました。でも、途中の有名なドラッグムービーはほんきでドラックムービーで観てるだけでくらくらしました。多分、ディズニーが描きたかったのはこの部分だけでしょう。LSDでも決めてアニメーターが描いたのでしょうか。それは、とんでもはっぷん。
ダンボとダンボ母は言葉を一切発しないのですが、それは、自分の価値に気がつかない者ということを物語っていたのでしょう。
新に才能のあるものは片翼。両翼の片方をもがれたイカロスは旋回し続ける。それをナビゲーションすることの出来る人物と出会う、それもまた才能。運命。宿命なのかなーと。ヘレンケラーで言えばサリバン先生。指針を指し示すプロデューサー。それは血が繋がっている必要はないということか次はピーターパンを。とセットしたのですが眠くて仕方がなくなり撃沈。数時間のフライトは夢のまにまに消えました。
そんな風に飛行機の中を楽しんでいたらあっという間にアムステルダムでした。なんだか拍子抜け。体調もすごぶる良く、こんなに幸せなフライトは生まれてはじめてでした。
荷物を持って慌てずにゆるゆるとコンコースを出でて、そして出口へ。タクシーに乗って、一方通行のせいでラウンド。町をぐるっと一周してホテルに着。60ユーロ。チェックイン。5Fの屋根裏部屋みたいな部屋。
荷物の整理をして町へ。散策、迂回して、スーパーで水を買う。うろうろ彷徨うわりに、夜はぜんぜんこない。気がつけば20時だのに。明るい。明るいぼんやりと。日本でいえば、17時くらいの気持ちにしかならないのにすでにサザエさんが終わった時間よりさらに夜は更けている。夜は濃くなるはずなのにいっこうに暮れない夕日を尻目にホテルに戻り、仮眠。仮眠してるうちに陽はとっぷりと暮れ、23時頃にさっちゃんと合流。バッファローの絵の店でスープとサラダとワインで乾杯。疲れもあるだろうと早めに眠る。眠るが数時間後に目が覚め、そして、眠り、そして、目が覚め、そして眠りを繰り返しているうちに夜が明ける。洗濯したり、雑務をこなし、朝食を。人はまばらであった。
その後、町をさっちゃんと散策。ウィンドウショッピング。飾り窓地帯を抜けてチャイナタウン。食べた炒飯と豆腐と空芯菜のようなものを炒めた物と雲呑スープとビール。たらふく食べて眠くなって、トラムでホテルへ。仮眠ののち、会場へ。サウンドチェックへむかう。歩いて。ホテルから5分くらいと会場は近い。
会場ではディビッドトゥープと灰野さんがサウンドチェック中。しばし、コーヒーを飲んで歓談。してるうちに時間。サーと鳴るスピーカーの困惑しながらこの会場で出来る限りの方法を模索。努力は惜しまない。当たり前だが。お客さんにちゃんと伝わるようにチェックするのがサウンドチェックというのですよ。
なかなか音がむずかしい。ちょっと京都のメトロに似た音の鳴りとPA。結局、うるさいモニターを切って演奏することに。さぁさぁと雨のような持続音でがんじがらめ。逃げ出すことを許さないので、断ち切る、しかないのだ。油断大敵。妥協大敵。あとで後悔するのは困る。できるかぎりのことを尽くすのは自分を言い聞かせるためのようなものなのかも、と漠然。
ホテルにいったん戻って、ゲームボーイアドバンスの「ファミコン探偵倶楽部〜消えた後継者〜」をプレイしているうちにうとうと。しばし、睡魔に身をゆだねる。つーか、私、寝すぎ。
響き渡る携帯のアラームで目が覚め、あわただしく用意をし、会場へ。会場のあっちこちで同時多発的に音楽がはじまる。少しだけ期待していた作品はどれも肩透かし。かっこうをつければつけるほど、ギャップでつらい。つまらない。セレブみたいに着飾った老夫婦。現代の音楽。権威。今日はカレーパーティー。えらいこと年齢層が上の客層。上品な。無縁の人々が枚挙する会場。白々しいうすら寒い生暖かい拍手を得るバンド。もっと素敵な感動を私は知っている。世界はもっと拓けるべきなのに!と落胆。でも、楽しそうです。音楽は楽しむためにあるのかも知れないけれど、音楽をメロディをフレーズを愛していると口で言うのならもっと愛してあげるべき。四六時中ずうっと音楽のことだけ考えて気が狂うくらいに好きでなければ音楽なんてやっちゃだめだと勝手に妄想。モテるために音楽をやっているやつは全員打ち首になればよい。モテるのは私だけで十分だ。

私たちの出番。会場の人はまばら。見えた地面が白い。見知らぬ振りして演奏。そのまま。扉、開かれるごとにうるさい。人は続々と会場に。終わったときには満タンの人々が固唾を飲んで観ていた。知っていたがそれでも気持ちはそれる。それは雑音。それは声。だが、その知らないふりをした感じは久しぶり。好きな人に好きといわれても想像の範疇。もっとアヴァンギャルドに。はじめて出会いたい。誰かの初体験を奪い続けたい。それがインプロ!それが即興!なのだと思う。そう、思う。
どなたか存じ上げないアムステルダムの留学生(?)に声かけられしばし話す。あわただしさに気をとられて気もそぞろ。認識した情報は僅か。このホムペを観てくれているそうで、それはうれしい。そんなことをきっかけに来てくれたのだというのならそれは至福。意味はあったのかもと愚問に付す。女子には私は甘いので声をかけられるだけでもどきどきしてむしろ男子にはうといので声をかけられてもどぎまぎもせず、冷淡になるのが何点。これがモテを下げるポイントなのではないかと若干、気にするもすぐに既に忘れる。
どうもありがとう。すみません、ばたばたしてて。
ホテルに戻って荷物を置いて。そのあと会場に舞い戻るとDat Politicsがライブをやっていた。自分のライブと重なっていたので観れないかも・・・と危惧していたのに時間がおしたせいで観れそうに。なので、躊躇なく、会場を開く。そこへ。
知ってる曲ばかり。マリファナの匂いが充満する会場で、だらだらとひさしぶりに踊る。あーこれ、アムステルダムっぺー。と一人ほくそ笑むと、そこへ何人かの誰だか知らない外人に声、かけられ、感動しただのエキサイティングファンタスティックベリーびーゅちふるミュージックなどとひとしきり。そのたびに、ダンスは中断。わからぬ言語で即座に回答できぬ私に優しく。知らぬ人よ、ありがとう。外国にくると、わかるが、日本の人はこっそりむっつりすけべ。なので、良くても悪くてもその場で声をかけてくれないため、後で誤解を生むのだ。好きなら好きっていえばいいし、嫌いならば一生みなければ心の平安は保てるだろう。だのにコソコソとするので気分は相乗効果でこんがらがる。一言、声をかければずっと精神衛生上いいのに。この、意気地なし!なんて思ってしまう。別に批判も絶賛も触れず心は一直線。気にせずなにも無神経でも私は嫌ではないのにな。とか思う。そう、思う。
で、あとはなんだかだらだらと。知らぬうち。マクドナルドでチーズと乾いたベーコンのサラダ。まずい。まずいけど、それを食べて眠る。眠った。
ああ、朝はいつも浅はかではなく。夜はなかなか明けない。まだまだ、うすぼんやりとしている夜の延長線上。日差しは愚か。
言葉少なに、増えた洗濯物を洗い乾かす。外は今日も晴天。からっと空気は晴れて乾いて私。そう、いつもそう。暑さもべたべたしていない。気候と私はドライな関係。
ショッピングに昼食、夕食。猫は窓辺で眠ってて。明日になった。
今日はこれから、これからロンドンへ行きます。
私は旅立ちます、ロンドンへ。そしてまた、いろいろと想い、悩むのでしょう。みなさん、おもしろ情報あれば私に。いくらでも誰かのオモシロ奴隷になるでしょう。