吉田アミの日日ノ日キ

吉田アミが書きました。

茶木ひろみ先生

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 漫画ナツ100に大好きな茶木ひろみ先生の作品を挙げたら先生のホームページで言及していただいたので少し、先生の良さについて語りたいと思います!

 茶木ひろみ先生ファンは私のまわりには多い。未映子さんとかね。
 http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/books/breview/73968
 われわれは絶叫したよ。狂喜乱舞したよ。新刊読んでね…。

 というのも1976年生まれあたりの一部女子(めんどくさいので文化系女子とひとまとめしてもいい)我々に与えた衝撃は、はかり知れないものがある。初期の茶木先生のマンガはどちらかというと大映ドラマ的な作風であったが、その後の『銀の鬼』からは一新。血、薔薇、死、悪…と、当時のヴィジュアル系バンドブームなどもあいまってその耽美的な世界観は蠱惑的な魅力を持ち、女児(当時小学生くらい)には惹かれてやまないものがあった。

 またこの先生の描く男がひどいんですよ。だって、鬼とか皇帝ネロとかだからね!比喩じゃなくってほんとうにそうなんですよ。愛した男が鬼ですよ?奥さん、どうします?どうしようもねえ。人は殺すは心臓はチョコレート味といって食らうわなんですが、そんな残酷な誰にも理解されない祝福されない恋なんですよ!そんな最低な男が時折、弱さやかわいらしさを主人公だけに見せるわけです。そこに女児は「ギャー!」となるわけです。わかりやすい王子様じゃなくって、惹かれてはいけない相手だからこそ、みたいな。私だけが彼の本質を知ってるのよ、的な。こういうキャラ設定がハマる人(私とか)にはマジハマりなわけで、非常に色気のある男性キャラを描かれるんですよね、茶木先生は。もう、女子心理をわしづかみ!わしゃー!アームカバーつけてるスーツ男子描かせたら右に出るものいないですよと明言。

 で、そんな先生の代表作『銀の鬼』をさしおいて、私は『姫 クラッシクガール』を挙げさせていただいたのです。私は当時、『銀の鬼』の良さがイマイチわからなくて、それはあとになって気がつきましたがエロさの本質を理解できないわりと物心がつかないぼんやりとしたところがあって、『銀の鬼』の魅力が十分にわかったのは大人になってから…だったんですね。当時は、マーガレットで読めるホラーマンガとして、受容しておりました。大人になって友達に「私あれではじめて性的興奮を覚えたよ…。ふぶきがこうやって(実演)つるされて縛られてるところで!」と告白され「え!そういう見方だったのか!!!」と驚いたわけです。鬼笛吹くシーンな!そう言われてみると確かに…エロい!んです。なぜ、この魅力に気がつかなかったのか、私のバカ!と思ったり。彼女とはファンサイトを作ろうという話で盛り上がりまくったこともありましたっけ。いかにもな昔ながらのサイトで、アクセスするとMIDIの音源が鳴り「あなたは**人目の鬼」「深淵なる鬼の世界…楽しんでいくぞえ」とか書いてあるという…。コンテンツはキャラクター相関図、名セリフ集、名コマ集(「走れ!善蔵」とか)、年表、鬼語録。もしくは鬼語変換ジェネレーター完備。などなど。

 話それました!マンガの話に戻しますと…

 その一方で、大人になって読み直すとですね、シリアスの中に唐突に挿入されるギャグやユーモアが作品に深みと独特の味わいを与えていることに気がつかされるのです。わかりやすく「Aは故にAである」という作品ではなく、「AかもしれないBかもしれない、いやZだったし!」的な逡巡しながら矛盾して破綻していくところがあるんです。なんとなく、わかります?割り切りにくい作品なんです。「こうでしょ?」とレッテルを貼りにくいというか…。今だと『鈴木先生』なんかがその手法で実に滋味溢れる作品として、人気ですがああいう過剰さをおもしろい!と思う方なら茶木先生のマンガは面白いと感じると思う。読みながら「?マーク」で頭がいっぱいになりながら、噛みしめるとあっという間にファンになっちゃいますよ。特にこの代表作の『銀の鬼』は今年になって続編が発売されるという時空を越えて求められる凄みがあります。また、この続編、単なる過去を懐かしんでるノスタルジーを人質にしたようなファンサービス的なものではなくって、今までのファンさえも「えー!!!」と絶叫するような(実際、最後のコマ読んだとき、私は叫んだのだが…)未だ、茶木先生現役!むしろ、その手法はとぎすまされてきた!と驚くことしきり。マーガレットという雑誌では押さえられていた表現がここにきて歯止めが効かなくなって、魅力が十分に開花!していると言えるんですよ。完全に『銀の鬼』は次のステージへ行っちゃってます。だから、こそ『銀の鬼』はまだ、挙げられなかった!現在進行形の作品なのですから。

 というわけで、1冊の短編作品として茶木マンガの中では完成度の高い『姫クラッシクガール』を入れさせていただきました。初心者の方にはここから読んでもらうのもいいと思います。そこから難易度の高い『銀の鬼』などの作品を手にとっていただいても。おすすめします!

 吉田アミマンガ・クラシックス認定マンガです。私はこれからも茶木ひろみ先生を応援します!